月を歩く。

月面を歩くように、ふわふわと。偏り具合が気持ち悪いですよ。

「路地裏の秋と暗室~音だけの滝本晃司」(@名古屋ロジウラのマタハリ春光乍洩/2012.11.25)

以前から行ってみたいと思っていたのです。“ロジウラのマタハリ春光乍洩”。
「春光乍洩」というのは、香港の王家衛監督の傑作「ブエノスアイレス」の原題。大好きな映画のひとつなんですよ。あと営業日にツイートで流れてくるメニューがひどく魅惑的。
滝本さんが年に4回くらい、こちらでライブをやっているのは知っておりました。だから何かのタイミングで行けたらなーと常々思っていたのですが、「次回は電気を消して、真っ暗な中でのライブにする」ということを知り、思い切りました。今年はGちくライブがありませんでしたのでね。何それ、おもしろそう!行っちゃえ行っちゃえーてな軽い感じで。
でも。
真っ暗闇ってどれくらいの真っ暗なの?
そんな中でも、ギターって弾けるの?
ふだん歌詞カードを見ながらだけど、それはどうなるの?
ワクワクとドキドキとハラハラ。ご本人も先日のライブで不安だとおっしゃってたし。

そんなわけで、行ってきました。

f:id:meimei0430:20140427172037j:plain

ロジウラのマタハリさんは、JR名古屋駅のすぐそば。
完全に真っ暗ってのはムリでしょと思いきや、建物に入った奥の右手にお店のドアがあります。こういう位置で、夜にドア(ガラスがはまっている木のドア)をダンボールなどで塞いでしまえば、真っ暗闇になるだろうなと納得。実際はダンボールで塞いだその上を、さらにカーテンで覆ってました。これでカンペキ。

まずセットリストをUP。 毎回そうですが、完全丸暗記です。順番違い・勘違い等あるかと思いますので、どうか参考程度に。 色を変えているのが暗闇でやった曲です。※は新曲につき、正しい表記が不明。

01. 眠ると消えると溶けると
02. まぼろし
03. ワルツおぼえて
04. 楽し楽しい時間
05. 自転車にのって
06. 温度計
07. 太陽が見ているだけ
08. かげのなか※
09. 星をたべる

~休憩~

10. やっぱ
11. さよならおひさま
12. 雨の日の午後
13. むし
14. 海にうつる月
15. 空の下(ウクレレ
16. そらいろ※
17. ポコポコ


~アンコール1~
18. ここ※

~アンコール2~
19. ハダシの足音
20. オヤスミ(途中)
21. また雨のうた(途中)


ライブが始まると、店内の電気が消され、灯りは数個のキャンドルと、滝本さんの歌詞カードを照らす譜面台用ライトのみ。
ライトは安定しているものの、ロウソクの光はユラユラ
その状態で『眠ると消えると溶けると』と『まぼろし』ですよ。それだけで一気に非日常。
ひどく緊張されていた滝本さん。つられて?緊張していた観客。すこしぎこちない感じでのスタートでした。

前日の岡山でのライブ&トークショーの話。 なんと3時間近くもあったらしくて!
うわー、こっちも行きたかった(;ω;)
で、宿泊するホテルが取れなくて、主宰した方々のうちのお一人の家に泊まったんだそうです。
何かテレビ観ようかー……と言ってもあまりオモシロイ番組はなく、なんとなくその方が持っていたDVD『野球』の鑑賞会になったとか。その感想。
「ピチピチのオレ、ピチピチの石川さん、ピチピチのヤナちゃん、……毛がある知久くん(笑)」
Σ(゚Д゚;)
最初の“ピチピチ”ですでにツボに来ていた私ですが、知久さんのくだりでふき出すところでした。

その後、その数日前の阿佐ヶ谷ハーネスさんや西荻窪サンジャックさんでのライブ時にも話した内容をちょこっと。
だんだんと緊張の時間が近づいてきます。 休憩に入る時の「吸ったり吐いたり……」も健在でしたが、休憩に入ってもしばらくそこでギターを爪弾いている滝本さん(ちょこっとコピー曲やってらした^^)。
東京でのライブの時は、とりあえず外に出て行ってしまうことがほとんどだったんですけど、いろいろ確認されていたご様子。

さあ、お待ちかねの第2部スタート。
「じゃ、これ回そうかな」と取り出しましたのは、むしぶえ。たま時代、『むし』で石川さんが回していたアレです。
そして消灯。真っ暗。見事なまでの暗黒。観客の戸惑いが静かながらわかりました。
滝本さんの姿はもちろん、お隣の方も見えません。自分の手すらも。
普通眠る時に電気を消しても、目が慣れてくるとうっすら見えるじゃないですか。それも無い。 これがほんとの暗闇。
あやうく自分を見失ってしまいそうになりましたが、たよりになったのがむしぶえの音。
フヨフヨフヨフヨ……という音が安心を与えてくれます。
そしてみんなが慣れてきた頃、今度はむしぶえから口琴に。 ビヨンビヨンビヨンと、不思議なリズム。これがまた、ひどく心地よい。
そして『やっぱ』。 ライブ時の前奏のギターが大好きなんですが、それが何もない黒……いや、本当は黒なんかじゃないかもしれない。色なんか無い。自分も闇に溶け込んでいる……そんな空間に流れてくるんです。
音は滝本さんの奏でるギターと、そしてその声のみ。
どうしてでしょう。明るいところで聴くよりも、ひどく澄んで、響いて聞こえるのです。
この日の日中はたくさん歩いたので、眠くなったらどうしよう~なんて思っていましたけどね。眠くなるヒマなんてありませんでした。
漂う。 ただ酔う。
ひたすら酔うしかないのです。
私、頭でゆらゆらリズムをとっていたかもしれません。手も動いていたかも。
波に乗っかってるクラゲって、きっとこんなキモチ。キモチイイ。
音があるだけなのに、こんなに幸せ。 最初は30分ほどとおっしゃってましたが、6曲。しかも『空の下』はウクレレに持ち替えてですよ。ちゃんと場所を確認してらっしゃったのでしょうね。倒したりとか、ぶつけるような音はしませんでした。

暗闇コーナーが終わって、譜面台用ライトと滝本さんの足もとに置かれていたランプが点灯されました。それでも1部の時より暗いのに、すっごいまぶしい。
そしたら滝本さん、「やあ(^^)」。
そして譜面台を見て「歌詞カードだ~」と心底うれしそう(笑)。
「隣の人にイタズラされたりしませんでしたか? 顔に何か書かれたり」って(^^;)

その後の2曲、まだ暗闇の余韻が残ったまま、ゆるりゆらりと楽しみました。 ロジウラのマタハリさんの天井って高いんですが、下からライトが当たって滝本さんの影が上の方に映るんです。それがまたなんともよくて。
緊張されていたせいか、はたまたライブ3日間連続だったせいか、もしくはその両方のせいか。ずっと喉の調子もよかったのに、アンコールの『オヤスミ』で声が出なくなってしまいました。
それじゃ違う曲に……と『また雨のうた』にしたけれど、やはり喉が限界だったらしくて、やはり途中でおしまい。「サヨナラッ!」と強制終了。
でも満足できました。 お疲れ様でした。

本当にすごい空間を体験できました。 名古屋にまで遠征した甲斐があったというものです。
またその場を提供してくださったロジウラのマタハリ春光乍洩さんは、ステキなお店でした。
こちらのお店での暗闇でないバージョンも見たいな。
頻繁には来られませんが、またこちらにはお邪魔したいです。
この日のライブごはんのタコライス、とてもおいしかったです。ごちそうさまでした。